樹幹注入


ある庭に大きなアカマツがあり、それはそれは大きなアカマツで胸高直径80センチ。真直に立ち上がり途中から二股に分かれて枝葉を広く巡らせている。しかし、青々と松葉を繁らす周りのアカマツに比べて少々色味が悪い。葉は所々茶色く変色し戻らない。常緑のアカマツも秋になると古い葉を枯らして落とす。その頃はまるで枯れかかったように見える時もある。だが健全なマツなら一過性の現象である。色味が悪いのは去年の夏頃からだという。8月に同じ敷地内の枯れマツ2本を伐採した。状況から考えて感染は否めない。
ただ、急速に枯れ進む他の感染木からすれば症状が異なる。精一杯抵抗してなんとか持ちこたえているのだろうか、いやそう思いたい。最近のことでは無いけれど枯れが進んだ立派なアカマツが再び青葉を取り戻したことを見たことがある。マツ材線虫病に罹患した樹が全て枯れるのではない、どれだけの線虫が樹内に侵入したか、これは程度の問題なのではないか。
一本の枯れマツを放置すれば多くのカミキリ(マツノマダラカミキリ)が産卵し、翌夏、その分のカミキリが羽化することになる。カミキリは手近なところで後食し性成熟する。彼らは生息域を拡げるために冒険などしない。2kmもの飛翔はおそらく産卵木を探すための行動である。だから近くの松を枯らし産卵を繰り返すことはマツにしてみれば悪循環だが虫にしてみれば好循環で効率が良い。
カミキリの頭数を爆発させないことで抵抗性のあるマツは生き残ることができるのではないか。
やや話が見えなくなったが、感染は絶望ではなく可能性を残すものであってほしい。
また線虫を殺す注入剤もその感染程度によって有効に働くものと思いたい。

グリーンガード NEO

今シーズンにおいて樹幹注入の仕事は一件もなかった。2月を過ぎればその時期を失ったと考えて良い。昨年12月の安曇野市の樹幹注入講習会にも参加して色々と情報を得た。
ゾエティス社の「グリーンガードNEO」は実績のある予防剤で効果は7年。
後発の三井化学アグロ社「マツガードクイック」はグリーンガードNEOの約半分の量で効き目は同じとのこと。メーカーの担当者からはどんな成分がどのように作用して7年もの間、効果を持続するのか具体的なことは聞き出せなかったが今までの経験からもその成果は間違いない。
また、施工にあたっては電気ドリルさえ使えれば特別の技術は要しない。ただし、価格はそれほど安いものではない。
グリーガードNEOでは1本90mlが約2700円と高額で、胸高直径40cmのマツに6本ものボトルを注入しなければならない。

過去の施工風景
過去の施工風景
過去の施工風景


松くい虫対策として各自治体が補助制度を設けていることが多くここ安曇野市でも薬剤代金につき50%(上限1500円)の補助金が支給される。とはいえ、やはり普及を妨げているのはこの金額である。上記直径40cmの場合16200円かかる。乗じてマツの本数分の出費となるわけだ。補助金があってもまとめて施工すればかなりの金額になる。

森林組合などで購入すると高くつくが実はネットでまとめて買うと安くなる店もある。
その辺の情報と作業方法はシーズン終了につきまた次期のお知らせとする。