稲刈り
今年の稲刈りは9月16日に行いました。5年ほど前から長野県千曲市の「姨捨(おばすて)」の棚田で米作りを手伝っています。
姨捨といえば鉄道ファンにはよく知られた国内でも珍しい「スイッチバック」で通過する駅で、日本3大車窓の1つでもあり、長野善光寺平を見下ろす夜景は素晴らしく、また、田植えの頃、水を張った小さな田んぼそれぞれに移り映る「田毎の月」でも知られるようにお月見ポイントの景勝地としても選ばれています。令和2年に「日本遺産」にこの景観としての「田毎の月」が認定されました。
私が手伝っている棚田は1800枚ある内の最も下方に位置する2枚合わせて約8畝(せ)ほどの田んぼで、もはや景勝地の視野からこぼれ落ちる場所で、千曲市が景観保全、文化継承に躍起になっているのを尻目に少々お気楽に稲作しています。
上のほうの景勝地の小さな田んぼは手で刈ったりしていますが、私たちは「バインダー」という機械で刈り取ります。「コンバイン」という大型の収穫機を使える広さはありますが、使いません。まず持っていないことと、刈り取りと脱穀まで同時にしてしまうコンバインではその後の乾燥まで機械の工程になってしまいます。乾燥を人に頼むとお金もかかるし他人の米と混ざってしまうこともあります。気の知れた人ならまだしも誰かもわからない人のものと混ざるというのは人間の根源的な拒絶反応を引き起こします(笑)。
長野県の場合、自然乾燥する時は写真のような「はぜ掛け」をします。湿気が少ないせいか新潟のようにはざ木に横棒を渡し高く干すことはしません。
「はぜ棒」という6m位の杉などの先端部分に「はぜ脚」という棒を組んで馬を作り稲を2段掛けします。掛け方は麻紐で束ねられた稲を8対2くらいに分け交互に掛けていきます。半分に割って掛けるより奥の方まで効率よく風が入ります。なるほどね〜米作りの知恵を感じますね。
最近は金属製の「はぜ棒」や「はぜ脚」が出回っていますが、単管パイプのような棒では径が細すぎてどうもしっくりきません。「はぜ脚」に関しては金属製のものを使うことに吝かではありません。私たちもはぜの両端は金属の「はぜ脚」を使っています。
田植えや脱穀よりこの稲刈りからはぜ掛けまでの作業が一番時間がかかります。
毎年、8畝(240坪)を2人でやって明るいうちに終わることはありません。来年は1人増やそうと決めるのですが、2人共、元々ケチなのか、はたまた呑気で去年の苦労も忘れてしまうのか、結局二人でやり、帰りは必ず真暗になります。
おかげで姨捨の夜景は達成感と疲労感が被さり、なんともドラマティックな景色になるのです。