ヒトクチタケ 観察
それは枯れて久しく、かなりくたびれたアカマツの枯木にも再び新しく出ていました。
まんじゅう型で大きなもので4センチ位。大きさはばらつきがあります。色はご覧の通りですがもっと茶色が薄く白っぽいものもあります。上のものは既に表面が乾いた感じになっていましたがまだ穴は開いていません。
成熟すると樹皮に接する元の部分にこのような楕円の口を開けます。名前の由来かと思われます。この穴から胞子を放出するようです。
最初から水分を感じさせない乾いた感じのキノコで、ツヤのある表面は時間が経つとまるで古くなったニスのように触ると薄い茶色のコーティングが剥がれます。
生のうちは干魚の強い匂いがあるとありますが、生臭さはなく、松ヤニの匂いが混ざっているような感じです。
穴の開く前のもの(左)と穴の開いた比較的新しいもの(右)の傘裏の膜を切り取ってみました。結構厚くて膜という感じではありません。傘裏はヒダではなく、「管孔」といわれる細い管の集まったもの。触っても硬い感じです。
断面を見てみると緻密で滑らか、軽くて高弾力。カッターナイフでもスパッとは切れませんでした。すぐに連想されたのがサンダルの底やジョイント式のマットなどに使われるEVA樹脂やポリエチレンフォームといわれるもの。質感がそっくりです。
口が開くとこのように虫の恰好の住処となり、まるで食住を提供している宿屋のようです。写真はスナゴミムシダマシでしょうか?これとは違う虫も確認できました。ヒトクチタケの胞子をたくさん持たせて宿から送り出す。特殊な形態はこのためにあるように思えてきます。
樹皮にしっかり付いているヒトクチタケを引っ張り剥がしてみます。マツにつく穿孔虫の開けた脱出孔から柄を伸ばすといわれています。
穴は真円なのでやはり虫が脱出した穴でしょうか? ではどのようにして菌はこの穴に辿り着くのでしょう?やはり虫が媒介しているのでしょうか?色々と大変興味深いキノコです。
今後の研究が待たれるところです。