アカマツ遷移 松の回廊
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2024年現在の様子
ここは使われなくなった林間施設のグラウンドです。
周囲はアカマツ林に囲まれていて上空から見ると白くぽっかり穴が開いているように見えていました。白く見えるのは花崗岩質の土壌だからです。人が立ち入らなくなった途端、堰を切ったようにアカマツの幼樹に埋め尽くされました。2017年のことです。
2017年の様子
2017年の様子です。周囲のアカマツから種を飛ばし勢力を伸ばしていくその過程がありありと見てとれます。
アカマツは「先駆植物」で裸地などから真っ先に芽を出す植物の一つです。しかもここは河原に接した砂地です。マツは栄養のないやせ地に強く最も優位に種の保存を展開できる場所であり、平坦地も相まってあっという間にここまでに広げられたのでしょう。
2017年の様子
まさに植物遷移の過程を「目撃」している状態でした。その初動のスピード感はものごとの道理の根本を示しているようで 私たちが生きるうえでの教訓となりえます。
2017年の様子
一斉に、密生しているアカマツの幼樹たちが、この後どれが残り、なぜ他は淘汰されてゆくのか。その素朴な疑問の答えを目の当たりにすることを期待していました。
ところが、それからすぐ、これらの幼樹たちが全て刈り払われてしまったのでした。人間の仕業です。落胆しました、憤りも覚えました。土地の所有者が変わったためでしょうか。しかし、その後グラウンドとして使われることはなく再び放置されることになります。マツの幼樹を収穫したのではありません。只々、刈り捨てたのです。その上で立ち入り禁止の看板を立てたのです。
2024年現在の様子
それから7年経って久しぶりにそのグラウンドに立ち寄ってみると、驚きでした。以前以上にアカマツが繁茂しているではありませんか。人の背を越えるものが所狭しと立ち並びこちらを圧倒します。枝を数えると高いものでちょうど七段。マツは輪生枝ですので枝の段を数えれば樹齢がわかります。また、マツは切られた株から萌芽しません。つまり7年前に刈り払われて後、すぐさま種から発芽したことになります。
2024年の様子
7年で人の背丈を越えるので一年で平均30〜40センチ伸びたことになります。さすがは陽樹、パイオニアです。アカマツの幼樹の頃の成長スピードは竹に次ぐ早さかもしれません。
マツの間を人が通り、何か遠慮がちに道が開いています。堂々たる隆盛にいつしか松の回廊ができていました。それまでの憂いも吹き飛ぶ逆転劇です。
2024年の様子
常に常緑だからというだけでなく、刈られても刈られても何度も再生(発芽)するマツだからこそ、そこに不老不死の憧憬と願いを掛けられたのかもしれません。
2024年の様子
松くい虫被害が拡大する長野県とこの安曇野でなんとか被害を抑えたいと考えています。最善の方法は被害木の伐倒駆除だと考えます。ただ本数が増えるほど難しくなるのも事実です。
防戦一方のギリギリの作戦だと思ってきましたが、このアカマツの旺盛な繁殖力をみて少しだけ安堵しています。人が思うほどマツはヤワじゃない。仮にまたここが刈り払われてもマツがある限り必ず再生する。
「マツは無くなってよい木ではありません」これを主張のキャッチコピーにしてきましたが、抗うだけでなくもっと信じても良いのかもしれません " … マツは簡単に無くなる木でもありません " と付け加えることにします。