8cm


昨年秋に撮った写真です。わかりづらいかもしれませんが正面に写っている木はアカマツの枯れ木です。
枯れてから4〜5年ほど経っているかもしれません。枝は上の方にまだ残っていますが太いものばかり、もちろん枯れたマツ葉などはいっさいありません。樹皮は所々剥げ、まるで白骨化しているようにも見えます。
さて、この枯れ木に登って行って伐採したのですが、というのもご覧のように木に囲まれていて唯一引っ張り倒せる方向には人家があり電線も通っています。クレーンなどはなるだけ使わないのがモットーですのでやはり登って伐るしかないのです。
とはいったもの見れば見るほどヤバすぎてなかなか覚悟がつきません。いろいろ思案した末、幹の中ほどで近くの木にロープで固定すること、しかも2方向に掛けること。本当は3方向に等分で掛けたいところですがその方向には木がありません。傾斜している方に倒れなければ良しとして2点掛けで決行の次第となりました。ただこれで安全を確保できたわけではありません。固定した上の部分で幹が折れれば一巻の終わりだし、根元がよじれて折れてもタダじゃ済まないでしょう。気休めにしかならないことを薄々感じつつチェーンソーを腰に登るのです。


木の状態を知るためマイナスドライバーなどを幹に刺してみたりします。ぐっと刺してズブズブと手の力で差し込める所までは木が腐っているということです。今回の例でいうと8センチ、直径が33センチの小口に対して8センチというと芯は17センチとなり約半分の太さになっていることになりますね。劣化してボケているのは辺材の部分なのですが腐朽が進めば心材にも及びます。さらに経験値からいうとこのように腐朽が進んでいるのは株の少し上から2〜3メートル位の範囲に多い。地面から立ち上がる湿気とその環境を好む昆虫がもたらす腐朽菌が影響しているのではと考えます。枯れマツの倒木を観察すると根こそぎ倒れているものの他に立ち上がり数メートルで折れているものも少なくないのです。

結局、この伐採は木の上部まで登っても折れることなく済みました。
枝を1本2本、自分の体重分を切り落とした頃にはずいぶん気が楽になります。それまでは毎回落ちて死ぬことを覚悟しながらの作業です。

場数を踏むことで樹上での木の揺れ具合でその危険度が何となくわかるようになりました。
ですが登高中の木が折れる事故にはあったことがありません。ですから危険回避はあくまで想像の中での判断になります。

伐り終えて無事に地上に降り立つ時、
今日も何とかなったなあと生還の喜びを噛み締めています。