ヒトクチタケ

「枯れマツ キノコ」と検索するとすぐにこの「ヒトクチタケ」が出てきます。

枯れたマツには必ずと言っていいほどこのキノコが付きます。

ネット上では所々で“枯れてから2年目に生える”と書いてありますが。知らない人が誰かの受け売りで広めてしまっているようです。実際はそんなことはなくアカマツが枯れ上がって割と早い段階で発生していることを確認しています。感覚的には枯れたのに気づいてから3ヶ月から6ヶ月くらいまでの間、専門書には枯れてから1年以内とあります。私も測ったわけではないので個体差や枯れる時期によっても違いがあるのかもしれません。まだ葉が青いうちにこのキノコが出ているものも見たことがあります。また枯れてから3年を経過しているものにも継続で新しく発生しているものもありました。

 

このキノコの発生はマツに付く穿孔虫(キクイムシなど)と関連があるようで虫が菌の運び屋として媒介している可能性が指摘されています。樹勢が弱まり松ヤニが止まった頃、虫たちはまだ柔らかくて栄養価の高い樹皮下に我れ先に集まってきます。そもそもマツを枯らすのも線虫とカミキリ虫の共生によるもの。

このことからも生物の生死の多生物による因果性を強く意識させられます。マツが発芽して大木となり、枯れて朽ちて無くなるまでの長い変遷の中で関わる菌や虫たちもその大きな生成のサイクルに組み込まれているように思えます。その輪の中に私たちも入ることが出来るでしょうか。マツ枯れの進行を目の当たりにし、その対処を考えるうえで、「マツ枯れ」以降も過程があることを忘れてはいけません。  

さて、この「ヒトクチタケ」。ネット上では「サルノコシカケ科」と分類されていることが多いようですが、「サルノコシカケ」はその名の通り木質で固く、多年生のキノコ群を指す通称で、実はその名を持つ種も属も存在しないため、この科名は間違いだとの主張があるようです。けれども科の基準種をどれにするかで説がわかれ統一されず、仕方がないので管孔型の傘裏を持つ「多孔菌科」と分類し。広義において区分している研究者もおられるようです。

植物や菌類の名命の改正、分類の改編は現在でも続いているようです。その辺のところも面白そうなのでこのままもう少し、そして分類学的に1属1種で形態的にも特殊な「ヒトクチタケ」の詳細も含めて追跡してみようと思います。

参考: *Wikipedia  *原色日本新菌類図鑑 Ⅱ 保育社